JAL争議解決へ全国キャラバン、団交、国会で新変化2022/06/05 13:46

労働フォーラム【2022年6月2日】木

全国各地でキャラバン展開、JAL争議早期解決へ世論拡大
四国、首都圏などで運動広がる、団交、都労委、国会質問などで新たな変化も

JAL不当解雇の早期全面解決へ世論の拡大をと、四国、関西、関東など各都府県で被解雇者労働組合(JHU)を含む実行委員会などがキャラバンなどの全国行動を展開し、地域で運動のすそのを広げている。
キャラバンは「JAL経営を運動で大きく包囲し、全面解決の回答を引き出すこと」「空の安全確保」などを目的に各地で展開。5月12日に岡山、13日に京都、17~20日には四国の徳島、香川、高知、愛媛の4県で実施。関東では2月に全国各界425人の賛同で2・16集会を成功させた「JAL争議の全面解決をめざす東京集会」実行委員会が呼びかけ団体。5月27日の東京・有楽町JALプラザ宣伝をスタートに、山手線キャラバンを展開。その後、神奈川、千葉、埼玉、栃木、群馬、山梨、茨城、東京三多摩を経て、6月10日にJAL本社前で東京集約行動が実施される。
各地の参加組織は全労協、全労連、連合参加の官民組合や地域組織、中立組合など幅広く、来賓では全労連参加の県労連議長からのあいさつ文も寄せられている。最賃1500円実現運動との連携も特徴である。
行動参加者は、「ビラをうけとった通行人から『解雇解決へ頑張って』などの声もかけられた」などの手応えを語り、「キャラバンは大きな成功」と報告。6月21日のJAL株主総会の会場前で大規模な宣伝行動を実施し、会社側に「争議解決の約束」発言の履行を求め、JAL不当解雇の早期全面解決を迫る方針である。

■全労連・東京地評の争議支援総行動にJHUも参加
全労連・東京地評の争議支援総行動が5月25日に行われ、JAL争議ではJHUのみがエントリー参加した。山口宏弥委員長が「空の安全からもJALの不当解雇の早期全面解決を」と訴えた。総行動では、東電グループのワット社、日本IBM、三菱電機などの争議支援も行われた。

■第5回団交、会社は「解雇者の優先的再雇用」(ILO166号勧告)を全面否定できず
JHUと会社との第5回団交が5月30日に行われた。会社側はILO166号勧告の「解雇者の優先的再雇用」について、「法的拘束力はないが、何もしないことではない」と回答。前回4月19日の団交では「勧告には拘束力がなく、再雇用に反映させるかは会社判断」と発言。勧告は守らなくても良いとして、国際ルール否認の暴言をはいている。
今回の交渉では組合が会社側の勧告無視を厳しく追及。「JALグループ人権方針」で定めている「国際的な人権の基準を尊重する」との規定に違反していなかと追及。会社側はILO勧告について「何もしないことではない」と答え、全面否定できなくなり、新たな変化も見え始めている。
また解雇者の原職復帰についても会社側は「不都合は特段ない」と回答。組合は解雇者の優先的再雇用とマッチングとは異なることや、整理解雇者と希望退職者とは立場が異なることなども主張。さらに「解雇争議の早期解決に向けての要求(解決金)」について、会社側は「払えない理由」の説明は無いままである。組合は、会社の不誠実な団交に対して不当労働行為だと強く抗議した。
交渉には山口宏弥委員長、山﨑秀樹書記長や客乗争議団員でJHU組合員など13人が参加した。

■第8回都労委調査、会社の不誠実団交を不当労働行で追加申立
JAL不当労働行為事件の第8回都労委調査が5月31日に開かれた。JHUは昨日5月30日の交渉内容を報告。組合側は統一要求である希望者の原職復帰、金銭解決などについて、会社側の不誠実な団交を不当労働行為として追加申立を行った。国交省の都労委調査とあわせ、団交と都労委、大衆運動を強め、解雇争議の早期全面解決をめざす方針である。

■国会でJALのILO166号勧告無視を質問、立憲民主の福田衆議院議員が斉藤大臣に
国会でJALのILO166号勧告無視問題について、立憲民主党の福田昭夫衆議院議員が5月20日、衆院国土交通委員会で斉藤鉄夫国交相に質問している。同議事速報(未定稿)によると、福田議員は斉藤大臣に対して、「JALの争議解決に向けて、国交省も対応してきた責任上、責任をもって対応すべきではないか」「JALは国際労働基準のILO166号勧告、再雇用に関わる優先権を無視している」「長引く争議は、人権、人道上に加え、空の安全にも影響する問題」などについて質問した。
大臣答弁は「個別企業の雇用関係に係る問題であり、日本航空が適切に対応すべきで、行政の関与は適切ではない」「ILO166号勧告は、法律などで特別の制限がない限り、各企業の自由な決定」と表明。一方、JAL争議解決への4回のILO勧告については、「政府として、対応すべき部分について適切に対応してきた」と答えている。
JAL争議解決へのILOの3次勧告(2016年10月19日)では、166号勧告を踏まえ、ILOは解雇者の優先的再雇用の協議を求めている。「政府として適切に対応してきた」と言う以上、国交省としてJALに対してILO勧告の履行を適切に監督指導したのか、さらに今後、JALを指導するのかが政府責任として問われることになる。JALも団交で「何もしないことではない」と答弁しており、勧告履行へ政府の監督指導責任が重要となっている。
ILO勧告は日本の政労使代表を含め多くの国の賛成で成立している。国会論議を含め、自民党を含め全政党が国際的な働くルールであるILO166号勧告の履行をJALに求めるべきだろう。(ジャーナリスト・鹿田勝一)【JAL闘争レポート63号】