JAL解雇10年、JAL被解雇者労組結成し、都労委に救済提訴2021/05/17 16:43

労働フォーラム(2021年5月17日) JAL不当解雇撤回闘争10年―「JAL被解雇者労働組合」を結成 「解決の道筋」へ都労委に救済申し立て JAL不当解雇撤回闘争から10年。打開へ向け新組合を結成してJALの労働不当労働行為を東京都労働委員会に提訴する新たな動きが出てきた。JAL争議で労働委員会への提訴は2度目であり、一度目は会社の支配介入を違法な不当労働行為として訴え、16年に労働委員会、最高裁で組合が全面勝利している。しかし、会社の不誠実な対応で争議は未解決のままであり、今年2月の国民支援共闘会議の総会でも支援組織の地方や産別から労働委員会への提訴の検討も提起され、弁護団のなかにも同じ見解があった。 新組合は「JAL被解雇者労働組合」(JHU)。委員長はJALパイロット争議団長の山口宏弥団長、副委員長は同争議団の清田均事務局長、書記長は同争議団の山崎秀樹副団長の3人。4月4日に結成し、会社に対して組合結成報告と職場復帰、補償など「三労組解雇問題統一要求」に準じた要求と団体交渉を3度申し込んだ。しかし会社が交渉に応じないと回答したため、団交拒否として5月12日に東京都労働委員会に不当労働行為の救済措置命令を申立て、記者会見を行った。 新組合の結成は、乗員組合の組合員資格が60歳までとされ、非組合員となったため、会社との団体交渉の機会もなく、交渉もできないために結成に踏み切った。パイロト争議団63人のうち、3人のみが年齢などで非組合員とされている。新組合で山口委員長は65年の乗員組合の分裂から統一を経て、親睦組織の機長会を当時の伊藤社長に申し込み、86年6月に機長組合への移行などの運動歴があり、解雇時は航空労組連絡会議(45組合)の議長だった。清田氏は機長組合委員長、山崎氏は日本乗員組合連絡会議(16組合)の議長など、いずれも組合の中心的な役員を歴任し、争議団の取り組みを支えている。 提訴では、「会社の不誠実のため、争議解決が10年を超えても未達」であると指摘。要求は乗員組合、機長組合(乗員組合と17年に統合)、客乗CCUの「三労組解雇問題統一要求」に準じて、「希望者全員の復職」「復職が適わない者の地上職勤務」や補填・解決金などとあわせ、労使関係の正常化と安全運航の推進などを設定。「自らの要求に止まらず、解雇争議全体の適正な解決に資する」「争議解決の合意形成を図るため誠実に交渉に応じること」を求め、都労委に「速やかに審理を遂げられ、公正な救済命令」を申し立てた。 会社側はJHU結成と交渉申し入れに対して3度目の4月30に文書で回答。「被解雇者の組合は、会社に雇用される労働者の代表に該当するか疑義がある」「乗員組合等とは別に同一事項での団交は、会社との二重の交渉になる」などをあげて、「団体交渉の実施は困難」としている。 JHUは会社側の見解に対して、「整理解雇された当事者として解雇争議解決の3労組統一要求に対して、会社の不誠意のため10年を超えて争議は未解決であり放置することはできない。既存の乗員組合、CCU両労組と連携しながら、本争議の全体的・包括的な解決の道筋をつけることを目的とした要求と交渉は新労組として固有の要求であり、団体交渉権の行使である」と反論。さらに「二重交渉との主張も、会社は合同交渉を拒否し個別の組合との団交を行っている経緯と相矛盾し、JHUの団交要求のみに応じない会社回答は労組法7条2号違反(団体交渉拒否)の不当労働行為である」と批判している。 会見で山口委員長は「解雇解決へILOも労働委員会の活用を勧告し、厚労大臣も国会で集団的労使関係では労働委員会の活用でいろいろな対応ができると答弁している」と指摘。「職場はコロナ禍で雇用不安を感じているが、会社への不信があり、信頼回復へ争議解決が重要だ。要求は3労組と同じであり、協力しあって早期解決をめざしたい」と語った。指宿正一弁護士は「JALとの交渉をこじ開け、解雇問題の解決につながるよう労働委員会での審問に取り組みたい」と提訴の意義を語った。 JAL争議解決へ自民含む超党派議員やILO、国民支援共闘など行動展開 JAL争議は、10年12月31日の大晦日、会社更生下で史上最高益をあげながら165人(パイロット81人、客室乗務員84人)の整理解雇を強行。最高裁は15年に整理解雇4要件(解雇回避努力、十分な協議交渉など)を踏みにじり解雇容認の不当判決を下した。一方、16年には解雇の過程で団結権侵害の不当労働行為があったとして「憲法28条違反、労組法7条違反」の違憲・違法解雇と断罪した。会社も18年から「整理解雇問題の解決に踏み出す」「被解雇者も採用応募の対象」などの経営方針を発表し、今年2月で16回の特別協議も行っている。 しかし、JALは復職希望者が応募しても全員を不採用にしている。しかもこの9年間でパイロット386人を採用しながら、争議団はわずか4人を地上職契約社員として復職させたのみである。客室乗務員は6205人を採用しながら争議団は1人のみを下請け会社で雇用の方向という。JALはILOの「優先的再雇用」勧告も無視し、不誠実な行為で解決の引き延ばしを繰り返し、組合の解決要求には応えていない。狙いは乗員組合、機長組合、CCUの委員長など多数の組合活動家を狙い撃ちにした組合つぶしと弱体化の団結権侵害であり、不当労働行為をあからさまにしている。 解雇解決へ国会では自民を含む超党派議員が動き、厚労省はJALのヒヤリングを実施し、ILOも解決交渉を勧告している。国民支援共闘には212団体が参加し、北海道から九州まで全国に33組織が結成され、支える会も700団体・個人に上る。不当解雇撤回を求める日本最大の争議。10年を迎え「解雇争議全体の適正な解決に資する」「争議解決の合意形成を図る」ことを求める新組合結成と労働委員会への先鞭をつけた提訴。新組合を支援し共闘を拡大させ、不当解雇解決へ都労委での審問が期待される。(ジャーナリスト・鹿田勝一)

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