そごう・西武、61年ぶりのスト、ビラ受け取りも良好 ― 2023/09/02 14:27

そごう・西武労組が8月31日、百貨店大手では61年ぶりのストを行った。親会社セブン&アイが9月1日、米投資会社フォートレスへ株式譲渡し、土地をヨドバシカメラに売却するとされた。組合は事業継続と雇用保障の明確化を求めて苦渋の選択としてストに踏みきり、そごう・西武は31日を「全館臨時休館」として各所に掲示した。
★ストは終日実施。組合員約4000人(パート含む)のうち、池袋本店で働く約900人が参加。店舗前で「ストライキ決行中」のボードを持ってアピールし、ビラは配布している女性組合員に思いを聞くと「雇用不安の解決と事業継続を」と語った。通行人のビラの受け取りもよく、組合員に話しかける人もいた。近くの公園で300人規模の集会とデモも行った。
★百貨店大手のストは1951年12月、史上初めて三越労組が賃上げと雇用確保を掲げてストに突入し、「三越にはストもございます」と話題になった。その後、1962年に阪神百貨店労組が春闘ストを実施し、今回は61年ぶりの百貨店スト。ストのやり方などで困ったことを聞くと、「ストを経験したことがなく、初めてのことで苦労の連続」と述べ、産別(UAゼンセン)のアドバイスも受けたと語った。UAゼンセンの百貨店部会もセブン&アイ側に雇用維持などの要望書を提出し、高島屋や三越伊勢丹など約10労組が賛同している。
★そごう・西武労組のストは広がりを見せた。連合の清水事務局長は「最大限支援すると同時に、当該組合員に寄り添い続ける」と表明。連合結成33年でも異例であり新たな変化といえる。全労連の小畑議長はX(旧ツイッター)で「全労連は、労働者の権利異例雇用を守るストに連帯する」と表明し、ハッシュタヅをつけてツイッターデモへの参加を呼びかけた。全労協も「この闘いを断固支持する」との談話を発表した。
スト実施の店舗前には連合の全国ユニオン幹部や日本労働弁護団幹部も姿をみせ、地域のユニオンなどが「そごう西武 スト連帯」などの横断幕を掲げて支援した。
★今後、組合は米投資会社フォートレスやヨドバシカメラなどとの交渉となる。事業継続と雇用保障は地域経済を含む社会的な問題となっている。単組だけでなく、UAゼンセンの百貨店部会や産別、連合、労働界、自治体、地域を含め、「組合の力」と幅広い共闘支援が重要となる。
★日頃、ストを報道しないメディアもスト現場に約70人以上が駆けつけ、文字や映像で「スト」を報道した。いま物価高・人出不足と政府の賃上げ政策で労働側は反転攻勢の好機だ。雇用だけでなく、春闘でも目減り賃金(実質賃金マイナス)阻止へ、欧米並みのストを背景にした労働組合運動と報道の転機の兆しとなるか注目される。(ジャーナリスト・鹿田勝一)
最近のコメント