初の「フリーランスサミット2023」組合結成、ストなど交流2023/06/05 17:40

初の「フリーランス・サミット2023」 連合、日本俳優連合、学識者ら20組織
米韓など組合効果、スト実践報告など25テーマで交流論議

約462万人にのぼるフリーランスの実態をとらえ、課題解決につなげていく初めての「フリーランス・サミット2023」が5月19~22日まで東京都内で行われた。主催は連合、日本俳優連合、学者、弁護士、研究機関、業界関係者などの組織・20人の実行委員会。開会では俳優の西田敏行さんが「働く者みんなが誇りをもって輝けるようがんばりましょう」とビデオメッセーを寄せた。サミットは4日間にわたり、25のテーマで講演、対談、ワークショップなど多彩な企画で行われた。

■先進事例―韓国で芸術家組合増加、アメリカで26ユニオン
海外の先進的な取り組みとして、呉学殊JILPT総括研究員が韓国の事例を報告した。韓国政府は2011年に芸術家福祉法、21年に芸術人権保障法を制定し、文化産業の振興策を推進。労働組合ではないが、芸術家の組合活動の妨害禁止や団体行動などを保障し、多くの組合がつくられた。事業主は組合の協議申し入れを拒否できなく、不利益な取り扱いも禁止されている。10種類の「標準契約書」もつくられ効果を発揮している。

アメリカの組合活動は、全米メイクアップ・アーティスト・ユニオンのカオリ・ナラ・ターナーさんが報告した。米国では1930年代に俳優、監督などがストなどを背景に協約を締結。現在はカメラなど職種で26のユニオンが結成されている。今年には全米脚本家組合などが待遇改善と権利擁で15年ぶりにストを実施し、他のユニオンも支援連帯しているという。ユニオンは労働条件や報酬を守り、医療、失業、年金給付などを保障し、ターナサンは「ユニオンのないことは、こわいことだ」と組合効果を語り、「日本のみなさま、ユニオンのメンバーを増やして、政府も無視できないようにしましょう」と熱いメッセージ。

■ストはどうやればいいんですか? 文化芸術芸能フリーランスの交渉成果の歴史
日本音楽家ユニオンの土屋学・代表運営委員はストを構えた交渉成果の歴史を報告した。昭和の時代。12月31日の大晦日。NHKの紅白歌合戦で、生演奏のバンドマンたちが待遇改善を求めて「演奏をボイコットしよう」と相談。NHKと交渉し、「出演料は2倍アップ」と大きなメリットを報告。「心がけたのは、抜け駆けがけが出ないように、みんなでストをやること」という。「今アメリカでは脚本家らがストを行い、フランスでも働く人が賃上げや年金改悪反対でストや暴動のような行動を展開している。働く人は待遇改善でストを」と強調した。
 日本俳優連合の池水通洋・代表理事は団交やスト・デモなどでアニメ一本のギャラが上がったことや、声優のギャラアップなどを報告。ITやAIなど困難な問題にも対応していくことが必要だと訴えた。一方、発注側からは植田益朗氏・元アニプレエクス、社長・株式会社スカイフォール代表取締役がアニメ業界の実情などを報告した。
参加者のフリーランスからは「スト効果を強く感じた」「ストができたらと思う」なども報告された。

フリーランス組合結成やストは、プロ野球労組のように活動している組織もあるが、多くの場合、雇用関係がないとされ、曖昧雇用として労働組合のような団的労使関係の構築が困難視されている。韓国では法律で組合を認め、協議を擁護し、アメリカでは26ユニオンが結成されている。ヨーロッパなどでは、フリーランスに「労働者性」を認めて、労働法制や判例で労働者として権利を保障する動きが強まっている。欧州議会では「プラットフォーム労働の労働条件改善に関する指令案」が審議中である。
日本もフリーランス取引適正化法が制定されたが、取引関係の契約保護が中心だ。労働法制で「労働者性」の概念の拡大などフリ-ランスの権利拡大への法制度が求められている。
(ジャーナリスト・鹿田勝一)